教授より

 

安全保障とは酸素のようなものであり、それが希薄になり息が苦しくなるまでは、人々はその重要性に気づかないが、実際にそうした状況になれば、それ以外のことは考えられないほどに重要なのである。(ジョセフ・ナイ ハーバード大学特別功労名誉教授)

 

  ロシア・ウクライナ戦争や、北朝鮮による核兵器や弾道ミサイルの開発・配備、世界一流の軍隊を目標とする中国による急速な軍備増強など、日本を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増しています。このような状況に対して、私たちはどのように考え、どのように対応すべきなのでしょうか。

 

 本研究会は、安全保障問題を理論的に分析できる力を養うことを目的としています。ここで言う理論とは、ある現象とその主要な原因とをつなぐ因果関係に関する知識のことです。リアリズムやリベラリズムといった主要な国際政治理論には、過去の世界で起きた国家間の対立や協調などを分析して得られてきた人類の英知が集約されています。異なる理論を身につけることにより、様々な国際政治現象を多面的に捉えられるようになります。また、理論的思考に基づく仮説検証により問題の解決を図るという科学的な姿勢を体得します。これこそ、慶應義塾伝統の「実学(実証科学)の精神」と呼ばれているものです。(ただし、理論重視とは言っても、主な研究手法は数学や統計分析ではなく事例研究です。)

 

また、本研究会は、「社会人基礎力」を高めることも目的としています。社会人基礎力とは、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎力のことであり、また、就職前に身につけておいてほしいと企業が考えている能力のことでもあります。本研究会では、①体系的に議論を評価するための批判的思考力(Critical thinking)、②人々の協働に欠かせないコミュニケーション能力(Communication)、および③コミットしたことに最後まで粘り強く取り組む行動力(Commitment)の3つの「C能力」に重きが置かれています。

 

以上の目的から、本研究会が歓迎したい方とは、「安全保障問題の理論的分析力と実用的な社会人基礎力を身につけるために、“研究会活動への責任ある関与”および“師友とのこまめな話し合い”を二年間続けていく強い意志を有する学生」としています。そのような意志があれば、国際政治論や安全保障論の基礎知識の有無は問いません。

 

本研究会の入ゼミ活動では、研究会側とゼミ生側とのニーズにミスマッチが生じないよう、研究やその他の活動の実態について、真面目な取り組みから生じる厳しい面も含め、ありのままの情報を提供しています。ぜひ充実した研究会ウェブサイトをご覧いただくとともに、説明会等の入ゼミ活動に気楽に参加してみてください。本研究会の理念や特徴に興味関心を持っていただける方からのご応募をお待ちしております。